コラム
2026年02月07日
なぜ日本の家にはベランダが多いのか?海外住宅との違いから考える「必要・不要」論
日本の住宅を見渡すと、多くの家に当たり前のように付いている「ベランダ(バルコニー)」。
洗濯物を干す場所、布団を干す場所として、長く日本の暮らしに根付いてきました。
一方で、アメリカやヨーロッパの住宅を見てみると、日本のようなベランダ付きの家は意外なほど少ないことに気づきます。
なぜ日本の家にはベランダが多く、海外の家には少ないのか。
そこには単なるデザインの違いだけでなく、住宅性能や暮らし方、そして時代背景の大きな違いが関係しています。
もちろん、ベランダが「良い」「悪い」という話ではありません。
大切なのは、なぜそうなったのかを知ったうえで、自分たちの暮らしに本当に必要かどうかを考えることです。
本記事では、日本の高度経済成長期から平成にかけてベランダが普及した理由と、海外住宅にベランダが少ない背景を整理しながら、
これからの家づくりにおいて「ベランダは必要か、それとも不要か」を冷静に考えていきます。
外観デザインや住み心地、将来のメンテナンスまで含めて、後悔しない判断をするためのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
日本の家に「ベランダ」が多い理由
日本の住宅にベランダが多いのは、決して偶然ではありません。
そこには、日本独自の気候・暮らし方・住宅事情、そして時代背景が深く関係しています。
洗濯文化と、日本の気候条件
日本では長く、洗濯物は屋外に干すものという文化が根付いてきました。
湿度が高く、室内干しでは乾きにくい気候の中で、日当たりと風通しの良い場所は欠かせない存在だったのです。
その結果、「2階の日当たりの良い位置に物干しスペースを設ける」という考え方が定着し、ベランダは半ば必須の設備として扱われるようになりました。
ベランダは単なる外部空間ではなく、家事を支える重要な生活動線の一部だったと言えます。
高度経済成長期〜平成の住宅事情
ベランダが急速に普及したのは、高度経済成長期以降のことです。
都市部では人口が集中し、住宅は狭小地・密集地に建てられるケースが増えていきました。
限られた敷地の中で、採光・通風を確保するために「外に張り出す空間」として、ベランダは非常に合理的な存在でした。
庭を確保できない代わりに、2階に小さな屋外スペースを設けることで、暮らしの快適性を補っていたのです。
また、マンションの普及も影響しています。
分譲マンションではバルコニーが標準仕様となり、そのイメージが戸建住宅にも波及していきました。
住宅性能が低かった時代の「逃げ場」としての役割
昭和から平成初期にかけての住宅は、現在と比べると断熱性能・気密性能が低く、
室内に湿気や熱がこもりやすい環境でした。
そのため、ベランダは室内と屋外の中間領域として、湿気を逃がしたり、空気を入れ替えたりする“逃げ場”の役割も担っていました。
窓を開けてベランダに面した空間をつくることで、少しでも住環境を快適にしようとする工夫だったのです。
こうした背景が重なり、次第にベランダは「必要だから付ける」ものから、
「付いていて当たり前」「とりあえず付けておくもの」へと変わっていきました。
しかし、その前提となっていた暮らし方や住宅性能は、今、大きく変わりつつあります。
次の章では、海外住宅ではなぜベランダが少ないのか、その理由を見ていきましょう。
海外(特にアメリカ)の住宅にベランダが少ない理由
日本では当たり前のように見かけるベランダですが、
アメリカをはじめとする海外の戸建住宅では、ほとんど採用されていないケースが多く見られます。
これは単なる流行やデザインの違いではなく、住宅の性能や暮らし方そのものが大きく異なることが背景にあります。
高断熱・高気密が前提の家づくり
アメリカの住宅では、以前から高断熱・高気密の住宅性能が前提となっています。
室内の温度や湿度は機械換気や空調でコントロールするという考え方が一般的で、
日本のように「風を通して湿気を逃がす」必要がほとんどありません。
そのため、洗濯も室内で完結するのが基本。
ランドリールームとガス乾燥機・電気乾燥機の組み合わせが一般的で、
外に洗濯物を干すという発想自体がほとんどないのです。
外観デザインを重視する住宅文化
海外住宅では、建物の外観デザイン(ファサード)を非常に重視します。
ベランダは、どうしても外壁のラインを分断し、
立体感や統一感を損なう要素になりやすい存在です。
そのため、屋根形状・窓の配置・壁の厚みなどで表情をつくり、
シンプルで美しい外観を保つことが優先されます。
結果として、ベランダは“あえて付けない”選択肢となることが多いのです。
「外に出る場所」は別に用意する
海外の住宅では、外部とのつながりを持たせる場合でも、
ベランダではなく地面とつながる外部空間を重視します。
たとえば、リビングから続くウッドデッキやテラス、ポーチ、庭など。
生活動線の延長として使いやすく、家具の出し入れやメンテナンスもしやすいのが特徴です。
つまり、海外住宅にとってベランダは「必要な外部空間」ではなく、
暮らしの合理性やデザイン性を考えると、採用する理由が少ない存在だと言えます。
このように、日本と海外では、住宅性能・生活スタイル・美意識が大きく異なります。
次の章では、日本で当たり前だったベランダが、現代の家づくりにおいてどのようなメリット・デメリットを持つのか、改めて整理していきます。
ベランダのメリット・デメリットを整理する
ここまで見てきたように、ベランダが日本の住宅に多かったのには明確な理由があります。
一方で、住宅性能や暮らし方が変わった今、改めてメリットとデメリットを整理したうえで判断することがとても重要です。
ベランダがあるメリット
ベランダには、今でも一定の価値があります。
ライフスタイルによっては、欠かせない存在になるケースも少なくありません。
- 洗濯物を外干しできる
日光と風でしっかり乾かしたい方にとっては、大きなメリットです。 - 布団やマットレスを干せる
定期的に天日干しをしたい方には便利なスペースになります。 - 一時的な屋外スペースとして使える
植物を置いたり、簡易的な物置として使ったりと、用途を限定すれば活躍します。 - 避難経路としての安心感
万が一の際に、屋外へ出られる経路があることを安心と感じる方もいます。
ベランダがあるデメリット
一方で、実際に住み始めてから「想像以上に負担になる」と感じる点も少なくありません。
- 雨漏り・防水劣化のリスク
ベランダは防水層や排水が必要なため、将来的なメンテナンスが欠かせません。 - 外観デザインが崩れやすい
外壁ラインが分断され、せっかくのデザイン性が損なわれることがあります。 - 実際には使われなくなるケースが多い
「最初は使っていたけれど、いつの間にか物置化した」という声もよく聞かれます。 - 建築コスト・将来の修繕費がかかる
面積が増える分、初期費用だけでなく、将来の防水改修費用も発生します。
このように、ベランダは暮らし方によって「便利にも、負担にもなり得る存在」です。
重要なのは、「なんとなく付ける」のではなく、自分たちの生活に本当に必要かどうかを見極めること。
次の章では、住宅性能が向上した現代の家づくりにおいて、
ベランダの役割がどのように変わってきているのかを見ていきます。
今の家づくりで「ベランダ」は本当に必要か?
ここまで、日本と海外の住宅事情や、ベランダのメリット・デメリットを整理してきました。
では、住宅性能や暮らし方が大きく変わった“今の家づくり”において、ベランダは本当に必要なのでしょうか。
住宅性能が上がり、ベランダの役割は変わっている
近年の注文住宅は、高断熱・高気密が当たり前になり、
室内の温度や湿度を安定してコントロールできるようになりました。
その結果、かつてベランダが担っていた「湿気を逃がす」「風を通す」といった役割は、
住宅そのものの性能や換気計画によって十分に補えるようになっています。
洗濯についても、室内干し専用スペースやランドリールーム、
ガス乾燥機・電気乾燥機を採用することで、天候に左右されない家事動線が実現できます。
ベランダを「付けない」という選択肢が増えている
こうした背景から、最近の注文住宅ではあえてベランダを設けないという選択肢を取る方も増えています。
ベランダをなくすことで、
・外観がスッキリする
・雨仕舞いがシンプルになり、メンテナンスリスクが減る
・建築コストや将来の修繕費を抑えられる
といったメリットが生まれます。
特に、海外住宅のようなシンプルで立体感のある外観デザインを目指す場合、
ベランダの有無は大きな分かれ道になります。
「不要」ではなく「目的を持って選ぶ」時代へ
重要なのは、「ベランダはもう要らない」と一概に決めつけることではありません。
今の家づくりでは、目的を持って選ぶことが求められています。
・外干しを重視したいのか
・外観デザインを優先したいのか
・メンテナンスや将来の負担を減らしたいのか
こうした価値観によって、正解は人それぞれ異なります。
ベランダは「付けるのが当たり前」な設備ではなく、
自分たちの暮らし方に合わせて取捨選択する時代に入っていると言えるでしょう。
次の章では、具体的にどんな人にはベランダが向いているのかを整理していきます。
こんな人には「ベランダあり」がおすすめ
ここまで読んで、「やっぱりベランダはいらないのでは?」と感じた方もいるかもしれません。
ただし、ライフスタイルや価値観によっては、ベランダがあることで暮らしやすさが高まるケースも確実に存在します。
大切なのは流行やデザインだけで判断するのではなく、自分たちの暮らし方に合っているかどうか。
以下に当てはまる方は、「ベランダあり」を前向きに検討してもよいでしょう。
洗濯物はどうしても外干ししたい人
日光と風でしっかり乾かしたい、
「外干しした洗濯物の気持ちよさ」を重視したい方にとって、ベランダは今でも有効な設備です。
室内干しや乾燥機に抵抗がある方、
花粉や黄砂の時期以外は外干しをしたいという方には、専用スペースがある安心感があります。
布団やマットレスを天日干ししたい人
布団乾燥機ではなく、
定期的に天日でしっかり干したいという方にとって、ベランダは実用的な場所です。
特に家族の人数が多い場合や、寝具の量が多いご家庭では、
一時的にまとめて干せる場所があることが助けになります。
周囲の視線や景観をあまり気にしない人
住宅密集地では、ベランダに干した洗濯物が外観に影響することもあります。
それでも「使い勝手を優先したい」「実用性重視」という方であれば、大きな問題にはなりません。
定期的なメンテナンスを許容できる人
ベランダには防水処理や排水の点検など、
将来的に一定のメンテナンスが必要になります。
それを理解したうえで、
「必要な設備だから、きちんと手入れする」という考え方ができる方には、ベランダは十分選択肢になります。
このように、ベランダは決して時代遅れの設備ではありません。
暮らしの中で明確な使い道がある人にとっては、今でも価値のある空間だと言えるでしょう。
次の章では、反対に「ベランダなし」が向いている人について整理していきます。
こんな人には「ベランダなし」がおすすめ
一方で、最近の家づくりでは「最初からベランダを設けない」という選択をする方も確実に増えています。
それは決して妥協ではなく、今の暮らし方や住宅性能を前提にした、合理的な判断と言えるでしょう。
以下のような考え方に当てはまる方は、「ベランダなし」の住まいが向いている可能性が高いです。
洗濯は室内干し・乾燥機が中心の人
ランドリールームや室内干しスペース、ガス乾燥機・電気乾燥機を活用する暮らしであれば、
洗濯動線は家の中だけで完結します。
天候・花粉・黄砂・防犯面を気にせず、
「いつでも同じ条件で家事ができる」ことに魅力を感じる方にとって、ベランダは必須ではありません。
外観デザインを重視したい人
ベランダは外壁ラインを分断しやすく、
どうしても外観に“生活感”が出やすい部分です。
ベランダをなくすことで、
・壁の面が美しく整う
・窓配置や屋根形状の自由度が上がる
・立体感のあるシンプルなファサードになる
といったデザイン面でのメリットが生まれます。
海外住宅のようなスッキリした外観に憧れている方には、「ベランダなし」は非常に相性の良い選択です。
将来のメンテナンスリスクを減らしたい人
ベランダは、防水層や排水口など、
将来的に劣化や不具合が起きやすい場所でもあります。
最初からベランダを設けなければ、
雨漏りリスクや防水メンテナンスの負担を大きく減らすことができます。
「使わない空間」をつくりたくない人
実際に多いのが、「最初は使うつもりだったけれど、結局ほとんど使わなかった」というケース。
物置化したベランダを見て、もったいなさを感じる方も少なくありません。
必要性がはっきりしないのであれば、
その分の面積やコストを室内空間や収納、性能向上に回すという考え方も、非常に合理的です。
このように、「ベランダなし」は決して特別な選択ではなく、
今の家づくりだからこそ成立する、ごく自然な判断になりつつあります。
次の章では、こうした考え方を踏まえたうえで、
ブリリアントホームがベランダをどのように捉え、提案しているのかをご紹介します。
ブリリアントホームの家づくりと「ベランダ」という考え方
ここまで見てきたように、ベランダは「ある・なし」で良し悪しを決めるものではなく、
暮らし方・住宅性能・デザイン思想によって、その役割が大きく変わります。
ブリリアントホームでは、ベランダを“標準的に付ける設備”とは考えていません。
大切にしているのは、海外住宅の考え方をベースにしながら、
日本の暮らしに本当に合うかどうかを一邸一邸考えることです。
高断熱・高気密だからこそ成立する選択肢
ブリリアントホームの住まいは、ツーバイフォー・ツーバイシックス工法をベースに、
高断熱・高気密を前提とした設計を行っています。
そのため、洗濯や換気をベランダに頼らなくても、
室内の温度・湿度を安定させ、快適な住環境を保つことが可能です。
ランドリールームや室内干しスペース、乾燥機の採用など、
家事動線そのものを室内で完結させる設計も得意としています。
「外観デザイン」から逆算するベランダの有無
北米やヨーロッパの住宅に見られる、
シンプルで立体感のあるファサードは、ブリリアントホームが得意とするデザインのひとつです。
こうした外観を実現するうえで、ベランダは時にデザインを崩す要素にもなります。
そのため、外観の方向性を丁寧に共有したうえで、
「ベランダを付けないほうが完成度が高まる」と判断するケースも少なくありません。
「なし」も「あり」も、自由設計だからこそ
もちろん、ブリリアントホームが「ベランダなし」を推奨しているわけではありません。
外干しを重視したい、布団を天日で干したいなど、
明確な理由がある場合には、ベランダを前提にした設計も行います。
重要なのは、「なぜ付けるのか」「なぜ付けないのか」を、
施主と一緒に言語化し、設計に反映すること。
自由設計だからこそ、暮らし方・家事動線・外観デザイン・将来のメンテナンスまで含めて、
総合的にベストな答えを導き出すことができます。
ブリリアントホームの家づくりでは、ベランダは“前提条件”ではなく、
住まいを完成させるための「数ある選択肢のひとつ」として扱われています。
次はいよいよ、本記事のまとめとして、
ベランダという存在をどう捉え、どう判断すべきかを整理していきます。
まとめ
日本の住宅にベランダが多いのには、洗濯文化や気候、高度経済成長期の住宅事情、そして当時の住宅性能といった、はっきりとした理由がありました。
一方で、海外、とくにアメリカの住宅では、高断熱・高気密を前提とした家づくりや暮らし方の違いから、ベランダは必須の存在ではありません。
つまり、ベランダは「良い・悪い」で判断するものではなく、「なぜ必要なのか」を考える対象だと言えます。
昔は合理的だった選択が、今の暮らしには必ずしも当てはまらない——そんなケースも増えてきました。
現代の家づくりでは、
・洗濯はどこで、どう行うのか
・外観デザインをどれだけ重視したいのか
・将来のメンテナンスやコストをどう考えるか
といった暮らし方そのものから考えることが重要です。
ベランダを付けるのも、付けないのも正解。
大切なのは、「なんとなく付ける」「昔からあるから付ける」という選択をしないことです。
ブリリアントホームでは、海外住宅の思想と日本の暮らしを掛け合わせながら、
一邸一邸のライフスタイルに合った住まいの形をご提案しています。
これから注文住宅を検討される方は、ぜひ一度、
「ベランダは本当に自分たちに必要か?」という視点で、家づくりを見直してみてください。
その問いかけが、外観デザインも住み心地も、納得のいく住まいへの第一歩になるはずです。