コラム
2025年08月30日
吹き抜け、大開口。それでも揺るがない“耐震性”を叶える家づくりの工夫

天井まで届く大きな窓や、開放感あふれる吹き抜けリビングは、多くの人が憧れる間取りのひとつです。
明るい自然光がたっぷりと差し込み、家全体が広く感じられるその空間は、日々の暮らしを豊かに彩ってくれます。
しかし一方で、「地震の多い日本で、吹き抜けや大開口は耐震性が不安」という声も少なくありません。
実際、吹き抜けや大きな窓を設けると、建物の耐力壁が減り、構造のバランスが崩れやすくなるのは事実です。
とはいえ、設計段階でしっかりと耐震性を考慮すれば、デザイン性と安全性を両立させることは十分に可能です。
この記事では、吹き抜けや大開口を取り入れながらも「地震に強い家」を実現するための設計の工夫やポイントをご紹介します。
開放感と安心感、そのどちらも妥協しない家づくりを目指す方は、ぜひ参考にしてください。
吹き抜け・大開口が耐震性に与える影響とは
吹き抜けや大開口は、室内に光と風を取り込み、空間を広く感じさせる魅力的な設計です。
しかし、構造的な観点から見ると、耐震性に対していくつかの影響を及ぼす可能性があります。
まず、吹き抜け部分は2階の床がなくなるため、建物の一部が「柱と梁」だけで支えられる状態になります。
これにより、その部分の水平剛性(地震の横揺れに耐える力)が低下し、地震時の揺れが増幅しやすくなります。
また、吹き抜け上部の壁が減ることで、耐力壁の配置バランスも崩れやすくなります。
一方、大開口(大きな窓や掃き出し窓)も同様に、壁の代わりにガラスを多く配置するため、建物全体の耐力壁量が減少します。
耐力壁は、地震や台風などの横方向の力を受け止める重要な役割を担っており、その量や配置は建築基準法で最低限の基準が定められています。
つまり、吹き抜けや大開口を設けるということは、耐震性を確保するための構造設計により一層の工夫が必要になるということです。
見た目や開放感を重視するだけでなく、設計段階で構造の専門知識を持つ建築士と十分に相談することが欠かせません。
耐震性を保つための設計上の工夫
吹き抜けや大きな窓を取り入れると、家の一部に「壁」が少なくなるため、地震の揺れに耐える力が弱まりやすくなります。
そこで大切なのは、ただ見た目を優先するのではなく、しっかりと強さを保つための工夫を合わせて考えることです。
たとえば、壁が少ない部分には柱や梁を太くする、窓の位置を工夫して揺れを分散させる、家全体のバランスを見て揺れに強い壁を配置するといった方法があります。
こうした工夫は、外から見ただけでは分かりにくいですが、家の中身をしっかり支える大切なポイントです。
また、地盤の状態や建物の形によっても耐震性は変わります。
設計の段階から地盤調査や構造計算を行い、「このデザインならどうやって強くするか?」をプロと一緒に検討することで、安心と理想の両方を手に入れられます。
吹き抜け・大開口でも快適に暮らすための追加ポイント
1. 温度差を抑える空調計画
吹き抜け空間は上下階で温度差が生じやすく、夏は冷房が効きにくく、冬は暖気が上に逃げやすくなります。全館空調システムや床下エアコン、シーリングファンを活用し、空気の循環を促すことが重要です。
また、暖気が逃げやすい吹き抜け上部には高断熱の屋根断熱材を使用し、熱ロスを抑えます。
2. 採光と日射のバランスを取る
大開口は採光の面では魅力的ですが、夏場の過剰な日射や冬場の熱損失を招く可能性があります。
・南面には庇(ひさし)やルーバーで日射をコントロール
・西日は外付けブラインドやシェードで遮る
・窓ガラスはLow-E複層ガラスやトリプルガラスで断熱性能を高める
これにより、自然光を取り入れつつも快適な室温を維持できます。
3. プライバシーの確保
大きな窓や吹き抜けは開放感をもたらす一方で、外部からの視線が気になる場合があります。
・高窓やハイサイドライトで採光しつつ視線を遮る
・道路側にはすりガラスや格子スクリーンを採用
・植栽やフェンスで外部との間に緩衝スペースを設ける
こうした工夫で開放感とプライバシーを両立できます。
4. 吹き抜けを活かした収納・見せる空間づくり
吹き抜け空間の壁面は高さを活かした収納や飾り棚として利用可能です。
・2階廊下側の手すり壁に本棚を設置
・吹き抜け壁面にアートや観葉植物を配置
・高所窓周辺にキャットウォークやディスプレイスペースを設ける
実用性とデザイン性を兼ね備えた空間演出ができます。
5. 夜間照明で雰囲気と機能性を高める
大空間は照明計画次第で印象が大きく変わります。
・吹き抜け上部にはダウンライトやペンダントライトを設置
・間接照明で壁面や天井を柔らかく照らす
・階段や廊下には足元灯を配置し、安全性と雰囲気を両立
明暗のバランスを意識することで、夜間も快適で居心地の良い空間を実現します。
工法選びで耐震性とデザイン性を両立
吹き抜けや大開口を取り入れながらも高い耐震性を確保するには、家の骨組みとなる工法選びが非常に重要です。
一般的な木造軸組工法(在来工法)でも耐震性を高めることは可能ですが、開口部が多くなる場合は構造用パネル工法やモノコック構造を組み合わせることで、壁量を確保しつつ広い空間を実現できます。
例えば、2×6工法は壁厚があり、耐力壁の強度が高いため、吹き抜け部分や大開口窓を設計しても全体の耐震バランスを保ちやすいという特徴があります。さらに、鉄骨造や重量木骨造などのラーメン構造であれば、大スパンを飛ばす設計が可能となり、柱や壁に邪魔されない開放感のある空間づくりが叶います。
工法によっては、断熱性能やメンテナンス性にも差が出ます。たとえば、木造パネル工法は気密性や断熱性を高めやすく、省エネ性能にも優れています。逆に鉄骨造は耐久性に優れ、デザインの自由度も高いため、外観のモダンさや内部のスケルトン感を重視する場合に適しています。
耐震性とデザイン性は相反するものではなく、適切な工法選びと構造計算によって両立可能です。建築士や構造設計士と早い段階から打ち合わせを行い、理想の間取りと安全性のバランスを追求することが、長く安心して暮らせる家づくりにつながります。
まとめ
吹き抜けや大開口は、住まいに開放感や明るさをもたらし、日々の暮らしを豊かにしてくれる魅力的な要素です。
しかし、その一方で耐震性への配慮は必須です。壁量の減少や構造バランスの崩れを防ぐためには、設計段階から構造計算を行い、耐震等級を確保するための工夫を盛り込むことが重要です。
耐震性を保つ方法は一つではありません。耐力壁の配置や構造補強、適切な工法選び、建材の強化など、複数の視点から対策を講じることで、デザイン性と安全性を両立できます。
また、断熱や採光、通風といった快適性にも配慮すれば、見た目だけでなく暮らしやすさにも優れた家が完成します。
理想のデザインを諦めず、安心して暮らせる家を建てるためには、経験豊富な設計士や施工会社との連携が不可欠です。
構造とデザインの両面から家づくりを支えてくれるパートナーを見つけることで、吹き抜けや大開口を活かした、唯一無二の住まいが実現できます。
大きな吹き抜けや大開口のあるお住まいを検討中であれば、実績豊富なブリリアントホームに是非ご相談くださいませ。